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後戻りできない!上場における資本政策の重要ポイント第2回 ~安定株主対策とは?〜

後戻りできない!上場における資本政策の重要ポイント第2回 ~安定株主対策とは?〜
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2011/6/20公開

 株式上場における資本政策とは、現状の株主構成をスタートとして上場までの資本構成がどのように推移していくのかのシミュレーションを行い、適正な資本戦略についての考え方をまとめることをいいます。

 今回のコラムでは、前回コラムでご紹介しました資本政策のポイントの一つである「安定株主対策」について解説を致します。安定株主の確保は、安定した経営を行う上で重要なテーマの一つです。

目次

    1.安定株主対策とは

     取締役の選任・解任や合併など経営上の最重要事項は株主総会の決議によりなされます。株主総会では各株主が議決権を行使することにより決議が行われますので、安定的に経営をしていくためには一定の議決権を確保する必要があります。この一定の議決権を経営者が一人で確保できればよいのですが、これが難しい場合には自分と同一又は同一方向の意思決定をしてくれる株主を確保する必要があります。このような中長期的に安定的な経営のための議決権行使に協力してくれる株主を安定株主といいます。

     上場後はもちろん、上場前であっても外部資金を調達する場合には安定株主を確保しておかないと経営者が思う通りの経営ができないばかりか、場合によっては会社を乗っ取られてしまうこともあります。よって、安定株主対策は資本政策を考える際の最も重要なテーマのひとつであると考えられます。

    2.安定株主は誰か?

     誰を安定株主として考えるかですが、これは各会社の状況や経営者の考え方によって異なります。株主を次の6つの区分に分けて考えてみましょう。一般的には図の下へ行くほど安定度は低いと考えられています。

    1. オーナーおよび親族(財産保全会社を含む)
    2. 役員
    3. 従業員、従業員持株会
    4. 取引先、金融機関等
    5. 友人、知人
    6. ベンチャーキャピタル

    (1)オーナーおよび親族(財産保全会社を含む)のみを安定株主とする考え方

    安定株主を最も狭くとらえる考え方で安定度は抜群です。(1)のみで必要な議決権を確保できていれば、上場後も相当安定した株主総会運営を行うことができます。

    (1)オーナーおよび親族(財産保全会社を含む)(2)役員を安定株主とする考え方

    共同経営の役員がいる場合や創業時からの役員でオーナーの信頼度が非常に高い場合です。ただし、役員は退職時には持株を処分することが多いでしょうから、将来的には安定株主でなくなる可能性があります。一般的にはこのグループを安定株主と考えることが多いのではないでしょうか。

    (3)従業員、従業員持株会について

    従業員や従業員持株会の持株は主として従業員の長期的な財産形成・福利厚生を目的としたものであり、これらを安定株主として考えることがあります。しかし、最近では終身雇用制度が崩壊したこともあり、安定度は必ずしも高くはないとも考えられます。従業員の財産形成のために株を与えたのであれば、上場後に売却されても文句は言えないでしょう。

    (4)取引先、金融機関等について

    取引先については、事業の提携先などで密接な関係にあれば安定度は高いのでしょうが、事業上の関係や先方の業績によっては常に売却の可能性があります。

    (5)友人、知人について

    オーナーの知人、友人を株主にすることがあります。かつてお世話になった方にお礼の気持ちをもってというところでしょう。安定度は様々でしょうが、個人株主の場合は違う観点で注意が必要です。最近よく言われる反社会的勢力との関係について当該株主本人だけでなくその親族なども問題となることがあります。こうした個人の背景を調査することには限界がありますので個人株主については特に慎重さが必要であると思います。

    3.安定株主の目標シェアは?

     安定株主の持株比率は何%くらいにすればよいのでしょうか。ここで考えるべきは会社法に定められた株主の権利です。会社法では株主総会において必要な議決数を次のように定めています。

    決議事項議決数
    定款変更、資本金の額の減少、監査役の解任、合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業の譲渡、有利発行による第三者割当増資、解散など 2/3以上
    (特別決議)
    取締役の選任・解任、監査役の選任、計算書類の承認、役員報酬の決定など 1/2超
    (普通決議)

     安定株主で2/3以上の議決権を保有していれば、上記のような特別決議を要する重要事項を決定することができ、ほぼ思い通りに経営環境を築くことができます。この2/3以上を確保できれば持株比率に関しては完璧ということができます。

     次に、安定株主で1/2超の議決権を保有していれば、取締役の選任・解任などの会社の基本的な事項を決定する普通決議に関する決定権を持つことができます。この1/2超を確保できれば持株比率に関しては合格ではないでしょうか。一般的には、この1/2超を目指すことが多いようです。

     資金調達の必要性等から、どうしても1/2超を確保できない場合は、1/3超を目指します。1/3超を確保できれば特別決議に対する拒否権を発動することができるので最低限の経営権の安定を守ることができます。

    INDEX : 後戻りできない!上場における資本政策の重要ポイント

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    蜂屋 浩一

    この記事の筆者

    朝日ビジネスソリューション株式会社 代表取締役 公認会計士

    蜂屋 浩一

    大卒後、公認会計士試験に合格し大手監査法人へ入所。株式上場支援の部門に異動し、多くの上場案件に携わる。2002年朝日税理士法人立ち上げに参画。上場企業から上場準備企業、中堅・中小企まで幅広くサービスを提供している。朝日税理士法人の運営と並行し、朝日ビジネスソリューション株式会社にて代表取締役を務める。税務・会計、組織再編、株式上場支援、事業承継など幅広いジャンルのコンサルティングで活躍中。